ソーシャル・ディスタンスを福祉現場で活用すること
ソーシャル・ディスタンスという考え方
感染症予防策として、「ソーシャル・ディスタンス」が重要視されてきている。
社会的距離と訳されるこの考え方は、距離をとって今は離れようというメッセージだ。1.8mから2mが最適と言われているが、距離の取りにくい場所なら、1mでもかなり感染予防につながる。
福祉現場での現実
ただ、私たち福祉の現場ではかなり難しい数値である。支援を必要とする人との距離はどうしても狭くなる。施設内での安全性を考えるがゆえに距離が縮まってしまうことも、多々あるからだ。
では、どうすべきなのか?
それはもう、なげやりなようだができることをするしかない。
- 放課後デイサービスでは子供たちが遊んだ後のおもちゃを毎日消毒。
- 座る時の距離をできるだけあけて同じ方向を向くように工夫する。
- 自由時間も小集団に分けて大勢で集まるのを避ける。
- 大人の知的障害者も安易に身体に触れず、絵や動作、文字などで視覚支援に重点を置く。
うちの施設は軽度の知的障がい者(児)への支援が多く、私が行っている介護予防部門では元気高齢者が対象なのでまだ工夫はしやすい方だろう。重度の障がい者や高齢者施設となると、もっと大変な場面があると考えられる。
それでも高齢者施設で働く私の友人たちによると、以下のようなことを徹底するしかないらしい。
- 職員は毎日3回の検温
- デイサービス利用者であれば、送迎者に乗る前の検温・施設内での検温
- マスクの着用
- 外から施設内に入る時の消毒
- 食事やトイレ後の消毒
- 施設内の毎日の消毒
- 利用者の体調悪化時の連絡先の確認
- 利用者の座る時の間隔とまめな水分補給 等々
未来を考えることで、今の重要性を確認する
ただこれらの仕事は、実は日ごろから必要なことであり、コロナウイルス感染症予防だから実施するというのは、検温や消毒の回数が増えたことぐらいである。この回数が増えるだけでも職員の仕事内容はかなり変わってくるので、簡単に言えることではないのだが、ポジティブに考えればこの出来事はこれからの支援にも生かせることがあるのではないだろうか?
例えば、支援する時に安易に身体に触り誘導していたところを、利用者(児)との距離を保ちながら、できるだけ自分の意志でできることは行い動いていただく。
その為にはたくさんの工夫が必要だし、支援員の知恵や知識も必要だろう。しかしこの工夫はAIにはできない人間らしさを含めた支援に繋がるのではないだろうか。
また、これからの時代は施設内で人と交流する時間と、一人ずつ少し距離を開けて座るようなプライベートゾーンを大切にする時間とのメリハリをつけることも大切であると考えられる。
ソーシャル・ディスタンスを福祉の現場で活用することが、これからの新しい考え方を生みだすきっかけにできるのならば、コロナウイルスは私たちに試練だけではなく、学びも与えてくれているのかもしれない。